新年   1月1日

{ By k.kashii , 16:11 }

「雪消える 川面に土手の岩肌に」
「初雲や  桐方橋で動かざる」
「竹に雪 あの鼻柱へし折って」

また、今日から新しい年の始まり。
新しい気分で謙虚に、明るくすごしたい。

冬の月  12月5日

{ By k.kashii , 15:22 }

「寒月を喰うさそり雲 身をそらす」
「有明の月 冬空をすり抜ける」
「遠来の友 ひとときの冬の虹」

一段と寒くなる季節がやってきた。
夜道に向こうの空を見やれば、冬ざれの暗雲たる空に
月を雲との戦いが始まっている。
月を飲み込んだその雲は、まるでさそりのような姿をなって、
その身を怒らせる。

そして、翌朝、打って変わって空は青空。
そこに朝まで残っていた月が、しゃれこうべのように澄んで浮かんでいる。
冬の空という美しい青色の薄いカーテンをすり抜けるようだ。

紅葉    11月14日

{ By k.kashii , 16:42 }

「晩年や燃えて燃やしてもみじして」
「一枚の枯葉降り立つ石の上」
「反り返るテイッシュ月喰うさそり雲」

恐るべき秋の季節となった。冬はなにかの始まりなら、
その始まりを成し遂げるために、秋は退廃と破壊と陶酔とデカンダンスの季節。
そう、ランボーの「地獄の季節」だ。

生と死と   10月17日

{ By k.kashii , 10:25 }

「生きること悩みっ放しで柘榴の実」
「秋の雨降り止みしとき雨の声」
「傷ついた象の姿に秋の岩」
「萩こぼれ赤ちゃんパンチパンチして」

辞世句とはなんだろう?芭蕉はそれを聞かれて、自分のすべての句が
辞世句だと答えたそうな。
死を直前に控えて、名句が出来そうにも思えない。おそらくは、
この国の江戸時代を中心に武士の切腹があったころ、
自決を直前にして、遺言としての辞世の感慨をまとめたものが、
辞世の短歌としてしばしば作られた。こうしたことから、辞世の句なるものが
もてはやされたのだろう。
さて、私はといえば、芭蕉同様に自作のすべてが辞世の句である、と思いたい。
それほどの覚悟と念入りを込めて、一句一句を作りたい。

玉葱   10月3日

{ By k.kashii , 9:40 }

「玉葱雲 たまねぎ色に夕焼ける」
「頭の中はすっからかんです いわし雲」
「線路の声が重々しくて秋の雲」

セザンヌの玉葱を見た。美しい、と思った。
秋の空に浮かぶ雲のいくつかが玉葱のように見えた。
やがて、日が傾き、夕焼けが迫ってきた。

大いなる   9月5日

{ By k.kashii , 16:35 }

「いわし雲 財布も家もすっからかん」
「座禅して闇深くなる 虫しぐれ」
「ソーリャソーリャ走れだんじり いわし雲
「この道を歩き続けて虫の声」

なにも語らない、なにも考えない。
大いなる人生に手助け無用。

アランフェス協奏曲   8月1日

{ By k.kashii , 7:14 }

「アランフェス ふるえる弦に沁みる風」
「ひまわりの起立礼して 卒寿して」
「涼しくば 欅椎の木さくらの木」

新進気鋭のメゾソプラノ歌手のリサイタルに行った。彼女の歌声を聞くのは、
これで2回目。いつ聞いても、その澄んだ声とその声量に圧倒される。
アランフェス協奏曲から、「わが想い」を歌った。繊細なギターの響きと
彼女の伸びやかでもの悲しい声が、風が吹くのを感じさせる。眼前に、
スペインのアランフェスの館があるような気がした。

赤ちゃん   7月26日

{ By k.kashii , 7:57 }

けんかしてトマトすっぱく空に雲」
「あほになれあほうになって浮いて来い」
「赤ちゃんバッタ房総半島ジャンプする

孫が生まれた。元気な男の子である。
生まれたばかりの蛙かバッタのように見えた。

夕焼け   7月7日

{ By k.kashii , 15:48 }

「夕焼けの紅 君の部屋いっぱい」

「朝顔が真っ赤なうそをつく夕べ」

「梅雨激し 後はしっとり四畳半」

7月7日は七夕と決まっているが、七夕にちなんだ句は作らなかった。
夕焼けの色彩の伸びやかさに心打たれて、一句作った。

法善寺  6月5日

{ By k.kashii , In , 13:45 }

先日法善寺横町を吟行した。夫婦善哉のおいしいぜんざいを
いただき、その後、ワッハ上方に寄って、
しばし、若手落語家の噺を聞いたり、道頓堀界隈で、
水の流れを眺めたりした。


「ゆらゆらと影が動いて穴子かな」
「水の影きらきらとして花菖蒲」
「人魚姫の尾びれのように花あやめ」

法善寺横町   4月25日

{ By k.kashii , 10:04 }

この夏に道頓堀界隈、法善寺からワッハ上方までを吟行の予定。
ところで、このあたりは私にとっては日々徘徊するところ。
わいわいと若者達や旅行者でごったがやしているところであるが、
ひとつ狭い路地を入れば、タイムスリップしたようになつかしく居心地のいい
空間にたたずめる。

「法善寺打ち水光る石畳」
「夏の月わっさわっさとたこ焼き屋」
「苔青く水掛地蔵にタイムスリップ」

桜   4月11日

{ By k.kashii , In , 11:19 }

町のあちこちで桜が満開。
心うきうきしてくる今日このごろ。

「桜坂 しだれ桜の枝の先」
「うきうきとして花の道花の風」
「セロリの葉 青くやらかく春の土」
「セロリ噛む アルハンブラの霞みなる」
「古本の開かずの頁 草萌える」

春雨   3月7日

{ By k.kashii , In , 11:14 }

3月ともなれば雨降りの日が続く。
夜明け前の静けさを打ち破るのは、雨だれの音。
枕元にまで雨音がやってくる。

「春の雨ひたひたひたと枕元」
「春雨の中を飛沫が走る道」

春の雲  3月21日

{ By k.kashii , In , 10:05 }

春は曇りがちの天気が多いもの。しかし、そんな日々が続く中に、
ぱっと晴れ渡る日が訪れたりするもの。そして、空を見上げると、
ぽっかりと真白い雲が浮かんでいたりする。

「春の雲 ふわりふわふわ喜寿の眉」
「梅の風 その中を行く男かな」

梅ちらほら  2月8日

{ By k.kashii , In , 11:03 }

道端沿いには水仙の花、ちょっと小道に入り込めば梅の花がちらほら。
水仙も梅もその香りが強い。
深呼吸して、その匂いを吸えば、心深く沁み込んでくるものを感じる。

「水仙の香や 胸疼くことばかり」
「氷雨降る 眠る少女の口もとへ」
「梅の香や もう少し幸せになろう」

東京  1月25日

{ By k.kashii , In , 15:57 }

久々に東京に行ってきた。妻と連れ立って。
嫁いだ娘の所へ。
娘達夫婦と一緒に歌舞伎を観た。橋之助のしっとりと落ち着いた演技がよかった。
雪の降り積もった様子をうまい演技で感じさせる。
そして、その後は「東京スカイタワー」を眺め、おいしいイタリアンを頂いた。
たっぷりとワインも頂いたことは言わずもがな・・・

「冬天へ スカイツリーは龍の如」
「初日出 破れ障子が羽ばたくや」
「老年や また朝が来て春の声」

初日の出     1月4日

{ By k.kashii , In , 9:12 }

信貴山に初詣。
空鉢護法の山頂まで登る。多少の汗をかき、一願成就を秘めて。
さて、新年早々に作った俳句・・

「初日の出 破れ障子の紙魚と魚」
「老年や 木枯らしの声深々と」